長めの評論

「モヒート」と「レクサス」から考える高度資本主義社会 村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

春樹作品で取り上げられたクラシックの作品が、AMAZONの在庫やCDショップの店頭から消失し、急遽再発されるなど、春樹初のブームが繰り返している。『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。この長編小説で気になった2つの要素が、「モヒート」と「レ…

『ONE PIECE』論

「海賊王に!!! おれはなる!!!!」と言ったのはモンキー・D・ルフィだが、「海道一の大親分に!!! おれはなる!!!」と言ったのは、清水次郎長である。初めて『ONE PIECE』全巻を一気に読んだとき、真っ先に頭に浮かんだのは、子どもの頃に父からカセットテープ…

未来予測小説を読む。堺屋太一『平成三十年』

何も変わらない未来を予測したフィクション。これほど希望のないディストピアが他にあるだろうか。 例えば、小松左京の『日本沈没』では、未曾有の大災害に日本が巻き込まれる様が描かれた。日本人が一致団結して立ち向かうこの小説で小松は絶望の中での希望…

クリスティーと観光

今回は、全世界70ヶ国で翻訳され、累計20億冊以上を売り上げている世界ナンバーワンの大ミステリ作家、アガサ・クリスティーの話を観光と結びつけて論じてみたい。 前号では、旅情ミステリが、この国の国土開発、均衡ある発展に沿って生まれ、いまだに生きな…