コラム・エッセイ

クルマとミュージックの融合史 後編(エアチェック文化からワイルドスピードまで)

この記事は、blogos(2022年5月でサービス終了)に掲載された「カーオーディオの文化史」から加筆したものです。 ■エアチェックの全盛時代 カセットテープの全盛期とはどのような時代だったのか。1985年の雑誌『FM STATION』(No.18)に、当時の読者の日常生…

クルマとミュージックの融合史 前編(カーラジオ誕生からクラリオンガール)

この記事は、blogos(2022年5月でサービス終了)に掲載された「カーオーディオの文化史」から加筆したものです。 ■もうひとつの歴史としての"車内音楽史" かつての若者たちは、車を所有したがった。ひとつに恋人とのデートという目的があり、そのムードを盛…

歴史改変SFとしての安室奈美恵の引退宣言

安室奈美恵の引退という現実の出来事について考える前に、タイムスリップというSF的な非現実について考えてみたい。 人類絶滅を目前に控えた未来から現代の世界に送り込まれてきた時空を超えたエージェントTー800。アーノルド・シュワルツェネッガー演…

「モヒート」と「レクサス」から考える高度資本主義社会 村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

春樹作品で取り上げられたクラシックの作品が、AMAZONの在庫やCDショップの店頭から消失し、急遽再発されるなど、春樹初のブームが繰り返している。『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。この長編小説で気になった2つの要素が、「モヒート」と「レ…

21世紀版”レッツゲットフィジカル”。サブスクリプション時代の所有と自由

2015年、世界の音楽産業においてデジタルの売り上げがフィジカルのそれを上回ったという。こんな言い回しで意味は伝わるだろうか? CDの売り上げをネット配信が追い越した。それ自体は、驚くべきことでもない。むしろ音楽CDを”フィジカル”と呼ぶのだというこ…

飛行機とフットボール

※『フットボールサミット』誌連載「すべての男の子の名前はジネディーヌ」第4回(2014年掲載分) ■飛行機事故で死ぬロック歌手とサッカー選手 「 バディ・ホリーが死んでロックンロールは終わったのさ」 と言ったのは、ジョン・ミルナーである。1972年の…

セナと聖子で一瞬だけ垣間見た丘の上の景色

かつて日本が経済大国だったことは、すでに忘れられて久しい。しかし、この20年の停滞を迎える直前の日本は、世界と肩を並べる夢を見ることができる坂の上に一瞬だけ立っていたことがあった。 太平洋戦争における敗戦の理由を「ものづくり」、もっと正確には…

東京砂漠のマンション興隆記

最近、ダイアパレスのCMを見る機会がない。こんなCMだった。場所は夜の屋上。超高層ビル群を背景に、3人のサラリーマンがバスケットボールをしている。音楽は、内山田洋とクール・ファイブの『東京砂漠』。 CM ダイア建設 ダイアパレス 東京砂漠 シチュエー…

ユーミンとコンテナリゼーション

荒井由実の`74年のアルバム『MISSLIM』の収録曲『海を見ていた午後』には、実在するレストランが登場する。 ♪山手のドルフィンは 静かなレストラン 晴れた午後には 遠く三浦岬も見える♪(作詞:荒井由実) このレストランは、眼下に横浜港が一望でき…

ベータ対VHS代理戦争

今からだともう40年近く前にベータとVHSというビデオの規格を巡る争いがあった。ベータを推奨するソニーと、VHSのビクター&パナソニック。両陣営は、10年以上に及ぶ長い争いを繰り広げることになった。 競争の明暗がまだはっきりしていない`84年、ソ…

田中康夫とさだまさし

小説『なんとなく、クリスタル』が発表されたのは、80年。海外ブランドに囲まれた女子大生・由利のリッチな消費生活を描いた小説は社会現象となった。 小説の脚注で著者の田中康夫は、さだまさしの悪口を書いていた。戦争が始まったら真っ先に戦争賛歌を作り…

ペットボトルのお茶が定番になったのはいつから?

東京 アーティスト: くるり,岸田繁,シュガーフィールズ,佐久間正英 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント 発売日: 1998/10/21 メディア: CD クリック: 12回 この商品を含むブログ (140件) を見る ♪飲み物を買いにゆく ついでにちょっと君にまた電話…

高齢化とロック

海外の大物ミュージシャンの死が相次いで報じられた。グラミー賞の追悼のコーナーも、年々長くなっている気がする。 ザ・フーもレッド・ツェッペリンもビーチ・ボーイズも、1960年代を生き抜いたロックバンドたちは、メンバーの死を通過してきた。ドラッ…

Atariとスピルバーグ

アタリショックとは? 先日スピルバーグの『レディ・プレイヤー1』を観た。 これには前もってAtariのゲームの知識が必要になるのだが、僕の場合は、たまたま『アタリ:ゲームオーバー』(2014年)というドキュメンタリー映画を観ていたので少し複雑なことにな…