犬かぶ:あっぷらいじんぐ

速水健朗のブログ

ベータ対VHS代理戦争

 今からだともう40年近く前にベータとVHSというビデオの規格を巡る争いがあった。ベータを推奨するソニーと、VHSのビクター&パナソニック。両陣営は、10年以上に及ぶ長い争いを繰り広げることになった。

 競争の明暗がまだはっきりしていない`84年、ソニーのベータのCMに松田聖子が、ビクターのVHSのCMに石原真理子(当時)が出演していた。当時の石原は、男たちの憧れを背負う“いい女”の筆頭だった。アイドルとしてまだトップにいた聖子に比べても、決して引けをとってはいない。ベータ対VHSという両規格を巡る陣営争いは、この時期ブリッコとブッツンという`80年代を代表する女2人の代理戦争でもあった。

 勝負の明暗がはっきりするのは、この3、4年後のことだった。デッキの普及台数で差がつき始め、あれよあれよという間にレンタル店の店頭からベータのソフトは消えていった。一方、聖子は1985年の結婚を機に休業。翌年に出産も行い、その後には海外進出に備えての海外移住を果たし、日本の表舞台に姿を見せなくなる。

 一方、石原はどうなったか? 当時、既婚者だった安全地帯の玉置浩二との不倫が発覚。“たまたま好きになった人が妻子持ちだった”という発言が話題を呼んだ。ちなみに、石原のビクターのCMでは、安全地帯の『yのテンション』がCM曲に使われていた。この不倫で石原への世間の風当たりは強くなり、石原は芸能界の一線から退いていく。

 争いを終えた現代の目線から見るとデファクトスタンダードの座を勝ち得たのは、β陣営、ソニーのCMに出ていた側の聖子である。一方、VHSの石原は、その後、暴露本を刊行、玉置との寄りを戻すなどで世間を賑わしたが、その後は怪しいブログを書く人として、半ば忘れられつつある。多くは語らない。


 VHSの時代すら遠くなりつつある現在において、`80年代はさらに遠くなりつつあるという想いだけが僕らをやるせなくする。