2018-06-07から1日間の記事一覧

飛行機とフットボール

※『フットボールサミット』誌連載「すべての男の子の名前はジネディーヌ」第4回(2014年掲載分) ■飛行機事故で死ぬロック歌手とサッカー選手 「 バディ・ホリーが死んでロックンロールは終わったのさ」 と言ったのは、ジョン・ミルナーである。1972年の…

「エマニエル夫人」は乗りもの映画である~もちろん二重の意味において【後編】

■知られざるその後のエマニエル さて、大ヒットした映画『エマニエル夫人』には多くの続編が作られている。シルビア・クリステルが主演を努めるシリーズとしては、翌年に公開された『続・エマニエル夫人』さらに『さようならエマニエル夫人』がある。前者は…

「エマニエル夫人」は乗りもの映画である~もちろん二重の意味において【前編】

■安手のポルノ映画がどうしておしゃれ映画になったのか? 『エマニエル夫人』は、1974年に公開されたフランス映画だ。当時、流行していたハードコアポルノではなく、女性客が押し寄せたという(特に日本では)「おしゃれ」なソフトポルノ映画である。 おしゃ…

『ONE PIECE』論

「海賊王に!!! おれはなる!!!!」と言ったのはモンキー・D・ルフィだが、「海道一の大親分に!!! おれはなる!!!」と言ったのは、清水次郎長である。初めて『ONE PIECE』全巻を一気に読んだとき、真っ先に頭に浮かんだのは、子どもの頃に父からカセットテープ…

未来予測小説を読む。堺屋太一『平成三十年』

何も変わらない未来を予測したフィクション。これほど希望のないディストピアが他にあるだろうか。 例えば、小松左京の『日本沈没』では、未曾有の大災害に日本が巻き込まれる様が描かれた。日本人が一致団結して立ち向かうこの小説で小松は絶望の中での希望…

セナと聖子で一瞬だけ垣間見た丘の上の景色

かつて日本が経済大国だったことは、すでに忘れられて久しい。しかし、この20年の停滞を迎える直前の日本は、世界と肩を並べる夢を見ることができる坂の上に一瞬だけ立っていたことがあった。 太平洋戦争における敗戦の理由を「ものづくり」、もっと正確には…

女性とメンソールタバコ

メンソールタバコは大人の女性のもの。そんなイメージは、どこで生まれたのだろう。 とんねるずの『歌謡曲』(作詞:秋元康)では♪メンソールの長い煙草を ため息で吸いながら 水割りのグラスの中に 落としたおまえの涙♪と、夜、大人、銀座のイメージが歌わ…

東京砂漠のマンション興隆記

最近、ダイアパレスのCMを見る機会がない。こんなCMだった。場所は夜の屋上。超高層ビル群を背景に、3人のサラリーマンがバスケットボールをしている。音楽は、内山田洋とクール・ファイブの『東京砂漠』。 CM ダイア建設 ダイアパレス 東京砂漠 シチュエー…

ユーミンとコンテナリゼーション

荒井由実の`74年のアルバム『MISSLIM』の収録曲『海を見ていた午後』には、実在するレストランが登場する。 ♪山手のドルフィンは 静かなレストラン 晴れた午後には 遠く三浦岬も見える♪(作詞:荒井由実) このレストランは、眼下に横浜港が一望でき…

ベータ対VHS代理戦争

今からだともう40年近く前にベータとVHSというビデオの規格を巡る争いがあった。ベータを推奨するソニーと、VHSのビクター&パナソニック。両陣営は、10年以上に及ぶ長い争いを繰り広げることになった。 競争の明暗がまだはっきりしていない`84年、ソ…

田中康夫とさだまさし

小説『なんとなく、クリスタル』が発表されたのは、80年。海外ブランドに囲まれた女子大生・由利のリッチな消費生活を描いた小説は社会現象となった。 小説の脚注で著者の田中康夫は、さだまさしの悪口を書いていた。戦争が始まったら真っ先に戦争賛歌を作り…

ペットボトルのお茶が定番になったのはいつから?

東京 アーティスト: くるり,岸田繁,シュガーフィールズ,佐久間正英 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント 発売日: 1998/10/21 メディア: CD クリック: 12回 この商品を含むブログ (140件) を見る ♪飲み物を買いにゆく ついでにちょっと君にまた電話…

高齢化とロック

海外の大物ミュージシャンの死が相次いで報じられた。グラミー賞の追悼のコーナーも、年々長くなっている気がする。 ザ・フーもレッド・ツェッペリンもビーチ・ボーイズも、1960年代を生き抜いたロックバンドたちは、メンバーの死を通過してきた。ドラッ…

クリスティーと観光

今回は、全世界70ヶ国で翻訳され、累計20億冊以上を売り上げている世界ナンバーワンの大ミステリ作家、アガサ・クリスティーの話を観光と結びつけて論じてみたい。 前号では、旅情ミステリが、この国の国土開発、均衡ある発展に沿って生まれ、いまだに生きな…